リウマチからの贈り物12 医療機関(医師)を選ぶことは大切です

医療機関(医師)を選ぶことは大切です ~実例を元に~

このブログは、関節リウマチのような「治らない」とされている病気の方々に何かお役に立てればと思い書いています。また、そうでない方にとっても、病気のとらえ方、医療との付き合い方、代替療法の取り入れ方……など、何かヒントになればと思います。

前回は、私の体験から納得できる医療機関(医師)を見つけることはとても大事だという話を書きました。

しかし、一人の医師に言われたことだけを信じ、完全にお任せしてしまう方は意外といらっしゃいます。

セカンドオピニオンを取る方がいいのでは、とお伝えしたこともあります。しかし、かたくなに、現在診てもらっている医師の言ったことしか信じたくない、という心理になる場合が多いことにも気が付きました。

数年前のことですが、知人から次のような相談を受けました。

知人の友人(Aさん)の娘さんが乳がんと診断されたそうです。片方の乳房を全摘し、さらに乳房の再建術を受けることになっているとのこと。「麻酔から覚めた時に、再建された乳房がある方が、患者の精神状態にはいい」という理由から、全摘後、そのまま再建手術をすることを医師から勧められたそうです。

知人は私に意見を求めました。

「娘さんは、全摘と同時に乳房の再建術を受けよう、と思い始めてるらしいんだけど…… でも、母親のAさんとしては娘が大きな手術を受け、そのまま乳房を再建するのは無理があるんじゃないかって思ってるらしい。奥村さんはどう思う?」と。

私はその頃、「もう、だまされない!『近藤誠の女性の医学』(近藤誠著)」を読んだばかりでした。

この本の中に、まさに「乳房再建急増でトラブル続出!」という章があります。

問題点として挙がっていることを引用します。*太線も著者によるものです。

「…… 再建するタイミングも重要。全摘術と同時に再建を行う “1期的再建術” と、術後、日を改めて行う “2期的再建術” がありますが、同時再建より、あとで再建するほうが後悔は少ないようです。  (略)  乳がんと告げられパニック状態になっている中で、医者にすすめられるがままに再建に踏み切ってしまい、不満を残す結果に陥りがち。一方2期的再建は手間もお金もかかりますが、乳がんの手術を終え、熟慮する時間があることで、より慎重な選択ができるでしょう。いずれにせよ、もっとも大事なのは医者選びです。外科医の多くは形成外科的なトレーニングをきちんと受けていません(*)。

(*奥村 補足:乳房全摘の手術は外科医、再建術は形成外科医の分野です)

にもかかわらず、再建を保険適用で行うには、座学で2時間の講習をうけるだけでよく、見よう見まねで再建術を行う医者が増えていて、手術のトラブルが相次いています。

再建術は、本人が自発的に決めた場合のみ、満足がいくものです。外科医がすすめてくる場合には警戒するくらいの気持ちでいないと、後悔することが増えるでしょう」

「もう、だまされない!『近藤誠の女性の医学』」近藤誠  集英社 より引用

まさに、ぴったりの内容だったので、知人を介してAさんにこの本をお貸ししました。

数日たって、知人から連絡がありました。

「Aさんはその本を読んで、やはり再建術は後でした方がいいんじゃないかと娘さんに言ったらしい。でも、娘さん本人は本も読まなかったって。事情をきいてみたら、先生が強く勧めてくれるし、術後目覚めたときに乳房があった方がいいと思うと。最初はどうしようかいろいろ迷っていたけど、思い切って決心してしまったから、もうこれ以上悩みたくない。だから、もう他の情報はみたくない、って本人が言ってるらしい」

とのこと。

せっかくある情報を見るだけは見たらどうだろう、と思いました。近藤先生が書いているように、「乳がんと告げられパニック状態になっている中で、医者にすすめられるがままに」決断したとすれば、少し冷静になった時に見直す価値はあるように思えました。

心の余裕がなくなると、自分で判断するより、誰かにお任せしたい、委ねたい気持ちになるんだな、とそのとき思いました。

私も自分が病気になってみて、その心理はより理解できます。悩んでる時間は辛いものです。「やさしく」提案してくれる医師がいれば、それでいいか…… と思ってしまう気持ちも分からなくもありませんしかし…… 本当にそれでいいのでしょうか?

数か月たって、また知人から連絡がありました。

Aさんの娘さんは全摘し、同時に乳房の再建術を予定通り受けたそうです。もう退院はされているようですが、再建した乳房の傷の治りが悪く、まだ当分通院が必要だということでした。母親のAさんは、落ち着いてから再建したらよかったのでは、と思ってるとのこと。娘さんも、もっと早く治るものだと思っていたので、ショックを受けていると。

この話を聞いて悲しい気持ちになりました。その後のことは伺っていませんが、このエピソードを私は忘れることができません。

自分がその状況でどのように判断するだろうか、やはり他人事だから、情報をいろいろ集めて判断しないと、などと言っているのだろうかと……

しかし、自分が病気になってみて、やはりパニックになるような重大な時ほど、冷静な判断、情報収集が必要なのだと思います。

誰かにお任せしてしまう「安心感」と自分で選んだ「安心感」は本質的に違うのです。どちらを選ぶかはその方の考え方だと思います。

次回は、Dリウマチ内科初診時のことを書きたいと思います。