リウマチからの贈り物(45) 声を出さない生活を続けると、転倒リスクが増える?

このブログは、関節リウマチのような「治らない」とされている病気の方々に参考になることがあればと、書いています。また、ご病気でない方でも、病気のとらえ方、医療との付き合い方、代替療法の取り入れ方……など知っていれば、役に立つ情報もお伝えします

声を出さない生活を続けると、転倒リスクが増える?

昨年、初めて緊急事態宣言が出されて、整体院を臨時休院して自宅にこもっていたとき、感じたことがあります。

仕事にでかけると、来院される方はもちろん、業者の方、ご近所の方……としゃべる機会がたくさんありました。

でも、仕事をしなくなると、極端にしゃべる機会が減ったことに愕然としたのです。

ああ、「仕事をやめた老後ってこんな感じになるのかな」と。こんなにしゃべらなかったら、ちょっとまずいかも……と。そしてさらに療養生活に入り、声を出さない生活が続き、いよいよこれをなんとかしないと、と思い始めていました。

母は亡くなる数年前から「しゃべり方を忘れそう」、「言葉がすっとでてこない」などと言っていたことも思い出しました。晩年耳が聞こえにくくなっていた父は補聴器を付けることを嫌ったため、母が話しかけても理解しにくく、お互いにあまり会話がなかったようです。

一人暮らしでなくても、今回のコロナ下のように会話が少なくなることもあります。一人暮らしなら、年齢に関わらずその傾向は強くなるでしょう。

自粛生活と療養生活で、ちょっと早めにそのことを実感したのです。

そんなとき、目にした本があります。「読売新聞『シングルスタイル』編集長は、独身・ひとり暮らしのページを作っています」という本でした。著者は自粛生活で、「ひとり暮らしだから、声の出し方を忘れそう」だと言っています。さらに声を出さないとどういう問題が起きるか、著者は声の専門医、渡邉雄介医師に話を伺っています。そこで、渡邊先生は次のように言われています。

・声はのどにある筋肉(声帯)がぴったりと閉じて、その間を空気が通り抜けることで振動して起きる音が声になる。

・この声帯は「声筋」と呼ばれる筋肉とつながっている。このため、声を出さないとこの「声筋」が衰える。

・人間が力むためには、声帯を閉じることが大事。立っているためには、肺を風船のように空気をためて張った状態にする必要がある。このとき、声帯が栓になるため、「声筋」が衰えると空気が抜けてしまう。そうすると、体に力が入らずよろけやすくなる。また、誤嚥性肺炎のリスクも高まる。

声を出さない生活を続けていると、のど周りだけの問題だけではなく、姿勢や動作にも影響を及ぼすということなのです。

目からうろこでした。

母が整形外科的には問題がないのに、あるときからふらつきやすくなり、屋内でも歩行器を使うようになった頃のことを思い出しました。

このようになった理由の一つとして、声を出さない生活が続き、声筋が衰え体に力が入らなかったのではないか、と思いました。このことを早く知っていて、声筋トレーニングをしていれば、母はもう少し楽に歩けたかもしれません。

一人暮しの高齢者は増えています。私もその予備軍です。このようなことを知ったからには、できることはしておきたいな、と思いました。

渡邊先生の本も読んでみました。その中で先生はこう言われています。

声筋(のど)を鍛えることで、転倒リスクは減らすことができる

「私がこの本で言いたいことは、この一言に尽きます。一見無関係なようですが、のどは『呼吸』や『食事』だけではなく、『力を入れる』『踏ん張る』という役割を持っていることを広く知ってほしいのです。筋肉は何歳からでも鍛えることができます

この本の中で声筋のトレーニング方法も詳しく書かれています。次回は取り入れやすい声筋のトレーニングについてご紹介したいと思います。

いつも、最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

おくむら整体院 奥村多恵子

●参考文献

・「読売新聞『シングルスタイル』編集長は、独身・ひとり暮らしのページを作っています」森川暁子 中央公論新社

・「声の専門医だから知っている声筋のすごい力」渡邊雄介 ワニブックス