症例紹介:座り方を変えたことで、むくみが改善した女性の症例

●症例紹介

80代の女性Kさんは数カ月前から両下腿のむくみが強くなり、皮膚のシワがなくなっていました。
内科を受診されましたが、特に原因は見当たらない、とのことで利尿薬が処方されました。できるだけ足を上げて座る(*)ように医師から言われたため、足台に足をのせて座るようにされていました。
利尿薬を飲むと、一時的にはむくみが改善されるものの、また同じようにむくみが強くなるため、服薬はしなくなりました。
また同時期、両太もものツッパリが強くなり、今までできていた正座がし辛くなりました。施術後はむくみも、正座時の太もものツッパリも改善しますが、数日で元に戻ってしまいます。
Kさんの生活の仕方を再度詳しく伺ったところ、座り方が気になりました。このため、施術と並行してこちらから提案した座り方を自宅で継続して頂いたところ、むくみが著明に改善し足部のシワが戻ってきました。
(*)足を上げて座るのは、それによって血流やリンパの流れをよりスムーズにし、むくみを解消しようという目的があるからです。

●Kさんの座り方の問題点

Kさんは、テレビを見たりしてくつろぐときは、常に図1のように座っていたそうです(ご本人の写真掲載不可のため、再現の写真を載せています)。
床よりも足は上がっていますが、台をかなり前方に置いて足をのせています。
これが逆に症状を悪化させていると思われました。この座り方の問題点は何でしょうか?

①膝が伸ばされた状態で固定される
膝を伸ばす筋肉は、太ももの前面の筋肉(大腿四頭筋)です。そのため、この座り方では大腿四頭筋は収縮し、短縮傾向となったまま固定されます。
正座ではこの筋肉が柔らかく伸ばされる必要があります。正座がし辛くなったのは、大腿四頭筋が短縮したことが原因だと思われます。

②足関節がつま先立ちのような形で固定される
膝を伸ばして台の上にかかとをゆだねることで、足関節はつま先立ちのような形に固定されます。つま先立ちで働く筋肉はふくらはぎの筋肉です。
そのため、この座り方ではふくらはぎの筋肉は収縮し、短縮傾向となったまま固定されます。これにより、筋ポンプ(*)は働きにくくなり、むくみは改善しなかったと思われます。
(*)筋ポンプ:ふくらはぎの筋肉が収縮と弛緩を繰り返すことで、部静脈を圧迫し血液を押し上げる働きのこと

③足が投げ出された状態になっている
この座り方では、足底には体重がかからず、足は言わば「投げ出された状態」になります。この状態では筋活動が少なくなり、筋ポンプはさらに働きにくくなります。それによってむくみが改善しにくかったと思われます。

●足台を引き寄せ、足を引いた座り方

これらの問題点を改善するために、Kさんに図2のように座ってもらうように提案をしました。
足台を引き寄せて、股関節を曲げ、膝よりもやや後方に足を引きます。施術後、この座り方をご自宅で継続して頂いたところ、施術による効果が継続するようになり、むくみが著明に改善し足部のシワが戻ってきました。
また正座時の両太もものツッパリも、わずかに残る程度に改善し正座がしやすくなってきました。

●足台の位置で何が変わるのか?

足台を引き寄せた図2の座り方では、何が変わったのでしょうか?この座り方では、膝が曲がり、足が引かれているために足底や足関節に体重がかかります。
また、足を引いているため、足の位置を自分で動かして調整できます。これらにより、ふくらはぎの筋ポンプはより働きやすくなったと思われます。
また、ここでは大腿四頭筋は適度に伸ばされた状態になり、大腿部のツッパリも改善したと考えられます。
むくみをとるために足を上げるとしても、どのようにして上げるかが大事です。普段の生活で「当たり前」と思っている生活動作や姿勢を見直すことが、症状の改善には重要であることを再認識できた経験でした。